□トイレよもやま話(転失気)

 

 古典落語に『転失気(てんしき)』がある。おならをテーマにした小話である。

あらすじは大体次の通りである。

 

 ある片田舎に住職がいて、何事も知らないと言うことが大嫌いであった。ある日下腹が張って気分が悪くなり医者を呼んで診てもらった。医者が『大したことはないがてんしきはありますか。あればそのつもりで薬を加減しますから』といって帰って行った。住職は『あります』と答えたものの『てんしき』なるものを知らない。色々調べたが分からない。お寺の小僧を呼んで花屋へ行っててんしきを借りて来い、花屋になければご隠居のところへいって借りて来いと言って使いにやった。小僧はもちろんてんしきなんて聞いたこともないまま。花屋へ行った。花屋いわく『こないだまで二つ三つあったがあったかくなったので自分は使わなくなったので貸してしまった』、ご隠居いわく『こないだネズミが棚から落として粉々にしてしまったので捨てたよ』。戻って来て和尚にいうと『仕方がないけど困ったな』という。小僧は師匠の和尚にてんしきとは何と聞くが教えてくれない。『医者の所へ行って聴いて来い』。小僧は医者のところへ行ってようやくてんしきなるものが『屁(おなら)』と分かる。帰る道すがら小僧は思った。『おなら』を借りて来いという師匠も師匠だが、貸してしまったと言う花屋、ネズミが粉々にしてしまったというご隠居、皆知ったかぶりをしてるんだ。これは帰って師匠に嘘をついてやろう。師匠は杯を自慢にしていたな。帰って待ち焦がれていた師匠にてんしきとは『杯(さかづき)』のことと答えた。師匠いわく『そうよ、てんしきとは杯のことよ、「てん」は呑む、「し」は酒、「き」は器と書いてかいて「呑酒器(てんしき)」だ。なぜ笑う、馬鹿野朗』。言っているうちに先の医者が訪れてきた。

 早速、医者に自慢の「呑酒器」を披露しようとしたが、医者は転失気が呑酒器とは知らず『あれば結構です、見るのは止めときましょう』。それでも和尚は小僧に持ってこさせて医者に呑酒器を見せた。医者いわく『転失気と書いててんしき、おならのことです』。和尚いわく『私は杯のことをてんしきと思っていました。 あっちへ行っていろ(小僧に向かって)。杯を重ねる(飲みすぎる)と「ぶうぶう」が出ます。』。

 

 いささか長くなったが以上が大筋である。ストーリは面白いが落ちは今一である。。

 

 以下は私が作った『おなら』小話。落語風に仕上げてみた。

 

 八 『おい、熊こう。 糞人のやつがまた一週間ほど通じがねんだってよ。おまけにいつも乱発しているおならのおの字もでないらしいや』

 熊 『はっつぁん、糞人のやつあセメントでも飲んで腸が固まっちゃったんじゃないのか』。

 八 『馬鹿野朗、バリウムは飲んでもセメントなんか飲むやつがどこにいる。』

 熊 『そう俺を責めんと(セメント)』

 八 『くだらねえ駄洒落を言ってねえで何とか妙案をだしてやれ』

 熊 『くだらねえから駄洒落って言うんでくだったら駄洒落じゃねえや。

    俺もそうだが糞人のやつもくだらねえ駄洒落ばかり言ってるから腹も下らねんで便秘になるんだ。たまにはユーモアやアイロニー(皮肉)のひとつも言えばいいんだ。』

 八 『またかい分かったよ 糞人に言ってやれ』

    

噂をすれば何とかで糞人がやって来た。

 

糞 『二人そろってまた誰かの悪口でもいってるんだろ』

 八 『そうじゃねえよ。。糞ちゃんの便秘の心配をしてたんだ』

 糞 『それは蟻が十匹。今日でもう八日目だ』

 八 『なんだい。その蟻が十匹っていうのは』

 糞 『蟻が十匹で「ありがとう」だ』

 八 『こりゃ熊こうの言うとおり便秘になるわな』

熊 『八日もでなけりゃウンチが腸内で異常発酵してら』

 糞 『そうだな。そのうち町内で発狂するかも分からん』

 熊 『相変わらずだな。ところでおならの一発もでないそうじゃねえか。身体によくないねえ。大体物事って言うのは何事も前触れというのがあるもんだ。ウンチを出す前におならを出すことを考えるんだな』

 糞 『そうなんだがこのところ下腹が張ってきたんで食事も制限してるんだ。』

 熊 『馬鹿言っちゃいけないよ。現代人ってやつはやれ風邪引いた、花粉症にかかったとぬかしてすぐ医者にいきやがる。だから医療費がかさむんだ。花粉症なんかハンダごてを熱くして鼻の穴に数回とおしてやれば一発で治るさ。便秘のときこそ大食いをして心太(ところてん)式に押し出すのが一番さ。今の人間は荒療治ってものを知らん。それでもだめなら帝王切開でもして出すんだな。』

 八 『おいおい 帝王切開で取り出すのは「赤子(あかご)」でなくて「うんこ」かい。

    医者もかなわねえな』

 熊 『糞ちゃん。お前さんのおならが出ないというのは思うんだが、腸内に固体のウンチがたまりすぎてガスの発生する隙間(すきま)さえないんだ。だから腸内に空間を作ってやればいいんだ。簡単さ。』

 八 『どうやって腸内に空間なんか作れるんだ。』

 熊 『だから(・・・)簡単といってるだろう。サントリーの「ダカラ」を飲んだら一発さ。おまけに飲んだ後は空間(空き缶)にならあ。』

 糞 『こりゃ面白いや。早速「ダカラ」を飲んでガスを期待(気体)しよう。』

  

以上大変お粗末な小話でした。